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雨降り少女
ある夏のことである。俺は急に降ってきた雨に濡れて歩道を走っていた。すると突然不思議な少女にこえをかけられた。
「傘を持っていないのであればお貸ししましょうか?」
と、たずねてきた。
そこには小さな少女がいた。ゴスロリファッションというのだろうか、とても人目につく服装をしていた。髪をツインテールに結び、これまた黒を基調とした明らかに一般的ではない傘をさしている。
「えっと、でも悪いよ」
俺は遠慮がちにそう答える。
「遠慮する必要はないです」
と、少女は言う。
「でも君も傘一本しか持ってないみたいだし、今日初めて会った男と相合傘なんてやだろ?」
少女は自分のさしてる傘を見ると、
「問題ないです。出せばいいのですから」
「傘を出す? でもにも持ってるようには見えないけど……」
「私は雨降り小僧の妖怪なのです。傘の一本二本余裕で出せるのです」
なんだろうこの娘? もしかして不思議ちゃんなのかな。あれか中二病というやつか。まあ、このままここでこうしてい
ても濡れるだけだ。早く帰ろ。
「まあ、そういうわけだから今回の件は―」
最後まで言い終わる前に俺は言葉を止めざるをえなかった。
目の前で何もないところから赤い色の傘が少女の左手から突然現れたのだ。それを少女は俺の前に突き出してくる。
「い、今のは何!?」
明らかに手品のたぐいではない。いったいこの少女はどんな魔術を使ったんだ。魔術? まさか本当に雨降り小僧の妖怪
だとでも、まさかな。
「どうやって出したんだ?」
「雨降り小僧の妖怪だからと先程言ったはずですが?」
傘を受け取りながら俺が少女に聞くと当然とばかりにそう言われた。どうやら本当の雨降り小僧……否雨降り少女だった
らしい。
「すごいな君。えっと名前―」
「アメ」
言い終わる前に少女は名乗った。
どうやらアメという名前らしい。
「天竜寺広哉っていうんだ、よろしく」
と、そんな感じにこの夏の日俺は不思議な雨降り小僧の少女に出会ったのであった。
それからここんとこずっと雨だった日が多かったせいかアメと会うことが多かった。しかし、アメは晴れたら現れることが
なく、本当に雨降り小僧なんだなあと思わされる。普段は一体どんな生活を送っているのだろうか。
一般には雨降り小僧は雨を降らせる妖怪として知られているんであって、雨の日しか現れない妖怪ではなかったはずだが、
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