scene.4

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「すみません……遅くなってしまいました……」 優也と春乃の座る席に塩樹学園の制服を身に纏った1人の少女が息を切らせながらやってきた。 「大丈夫ですよ。元々遅くなるって伝えてもらっていましたし。ところで、貴女が【恋する☆乙女】さんで間違いないですか?」 そんな少女を似合わない丁寧な言葉遣いで対応する優也は、春乃にボールペン型のボイスレコーダーを渡し胸ポケットに差し込ませている。 勿論、録音機能はONにされた状態だ。 ちなみに、利一君と由奈には近くのファミレスで待機してもらっている。 恋愛プランナーのメンバーに集合を報せる連絡を取ってもらった結果、来てくれることになり、集合と打ち合わせが出来るファミレスの方がいいかと相成った様だ。 「はい。私が【恋する☆乙女】で間違いありません。そちらは【恋愛ナビゲーター】さんでいいですか?」 優也の問い掛けに塩樹学園の女子生徒は答えた。 少し緊張気味なのが見て取れる。 「ええ。俺が御手洗 優也でとなりに座る女子が青井 春乃。俺たち2人で【恋愛ナビゲーター(笑)】をやらせてもらってます。」 そんな依頼人に優也はなるべく爽やかに応えた。 「あの、失礼ですけど、所属しているクラスとお名前を聞いてもいいですか?」 そこに春乃が割って入り、【恋する☆乙女】の素性を聞き出すこととなった。 「私、1年C組の山川 穂波って言います。」 依頼人である【恋する☆乙女】こと山川 穂波に優也は目を向ける。 肩に掛かる茶色く染めた髪にゆるくパーマをあてている、どこにでもいる様な女子高生と言った感じであるが、優しい感じのする幼さを充分に残した可愛らしい容姿をしていると優也は感じた。 ……ギャルゲで言えば、仲の良い明るい感じの攻略対象外の可愛いキャラって感じか。 そんな失礼な感想を付け加えるのが優也らしい。 「とりあえず、飲み物と軽くつまめる物でも買って来ます。いくら依頼するとは言え、異性である俺がいると話しにくい事なんかもあるでしょうから。青井に話してください。でも、できれば、嘘や紛らわしいことは言わず出来れば正直に話してくれると助かります。勿論、後から俺も青井経由とは言え、聞くことになります。なので、俺に伝わって欲しくないことなんかはその旨を青井に言ってくれれば大丈夫です」 とりあえず優也は要望を言い立ち上がる。 「は、はい」 【恋する☆乙女】こと、山川 穂波の返事を聞くと、優也はいつになく優しい表情を浮かべ一つ言い残したあとに言葉の通り飲食物を仕入れに行くことにした。 「絶対上手く行くなんて保障はできませんし、保証もありませんが、貴女の想いを素敵な物にしようと一生懸命にやりますよ」 ……あんたの前にいるスイーツ(笑)がね。 と、心の中で付け加えながら。
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