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ふらつく頭をなんとか誤魔化しながら、明日香は椅子に腰を下ろした。
「で、誰にバレたのかしら?」
そして、疲れて元気がなさそうな上、やるせない表情を浮かべる利一君と由奈へと尋ねる。
「……豊泉学園から来た御手洗だよ」
表情に苦々しさを加えながら利一君は答えた。
「えっ、何でバレたのかしら?そもそも、御手洗くんが来てから私たち彼の前で活動してないじゃない」
何が何だかわからないと言った表情を浮かべながら明日香が言葉を返す。
「あの~、あの人が言うには瑠璃姉が騒いで佐藤さんのことをあの人が好きとか何とか喚いた時の利一せんぱいと明日香さんとヒロキさんの反応を見て何かあるなと思ったそうです。あと、なんだかんだ3人で集まってるのが多いのとあの人の事を探る様に見てたからもしかしたらと思ったって言ってました」
やるせない表情のまま由奈は明日香に伝えた。
「え!?それだけで?」
「はい。でも、確信したのは、あの人が未奈姉を見る時の利一せんぱいの目が未奈姉を見ずに誰か違う人のことを未奈姉に重ねて見てると感じて、未奈姉に近しい誰かと何かあってリバビリがてら恋愛プランナーをやってるんじゃないかと思ったからだそうです」
「……なんなのそれ……」
「そう思いますよね?わたしが不意にギャルゲって恋トラに効くのかな?って呟いたら、恋トラをしらなかったらしく、一緒にいた春ちゃんさんに教えてもらって話が繋がったって言ってました。何の話だよって感じです」
会話を重ねるごとに明日香までもやるせない表情になっていったのは仕方のない事だろう。
「利一くんはいつもの様にとぼけたりしなかったのかしら?」
「多分無理です。いきなり、利一せんぱいに利一君って恋トラだろ?って言った後、何が聞きたい?って睨んだ利一せんぱいに対して利一君、恋愛プランナーだろ?って言ってきましたからね……」
「……全く意味がわからないわね」
「そうなんです。思わずわたし、気持ち悪いって言っちゃいましたもん。明日香さんあの人ボコボコに殴ってくれませんか?」
「……無理ね。私じゃ一発も当てられないと思うわ」
「あの人、柔道も利一せんぱいより強いんですよね?なんなんですかあの人?」
「そうよね。ちょっと怖いわよね……」
「ところで、ヒロキさんは来ないんですか?なんかあの人ヒロキさんも呼んでくれとか言ってましたけど」
「えぇ。ヒロキくんなんだけど、来れなくなったみたい」
女子二人が繰り広げる会話を利一君は黙ってみていた。
「で、バレたから私を呼び出して対策でも考えるのかしら?」
「違うんです。あの人が言うには依頼がしたいから利一せんぱいに恋愛プランナーだろ?って確認したかっただけみたいです」
「依頼?」
「はい。なんでも妹さんに恋愛プランナーか恋愛ナビゲーターに依頼したいからって言われたらしいですよ?」
「恋愛ナビゲーターって豊泉学園のよね?」
「そうです。利一せんぱいが何で恋愛プランナーに依頼するのか、恋愛ナビゲーターに依頼すればよかったんじゃないかって尋ねたら……」
会話を続けていた由奈が苦々しい顔をして1度口を閉じた。
「尋ねたら……?」
だが、明日香からすれば話途中に止められても気になるらしく、由奈に続きを促す様に言葉を投げた。
「嫌だよ。なんで俺が妹の友達の恋愛相談に乗って、どんな顔をして自分が小っ恥ずかしい恋愛ナビゲーター(笑)だってバラさなきゃいけないの?ってそう言ったんです」
「……え?まさか……」
「あの人と春ちゃんさんの2人で恋愛ナビゲーターだって春ちゃんさんが物凄く申し訳なさそうな表情を浮かべて教えてくれました」
「…………」
由奈の言葉を聞いた明日香は利一君、由奈と同様にやるせない表情を浮かべながら言葉を発することができないでいる。
そんな、明日香に対して由奈はますます表情を苦々しく歪めながら言葉を紡ぎだそうと口を開いた。
「で、あの人今、塩樹学園の生徒さんから依頼されているらしく、今から依頼人と会うから恋愛プランナーも手伝ってって。ウチも手伝うからお願いって押し付けられたんです」
「……もう1回殴ってみようかしら……」
3人の間に流れる空気はますます何とも言えなくなるのだった。
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