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明日香と由奈と利一君がなんとも言えない重い空気に包まれていると、由奈の携帯がなにかしらの着信を告げた。
「あっ、すみません。ちょっと携帯見てもいいですか?」
「あぁ。気にせずどうぞ」
断りを入れ、返事を聞いた後携帯を見ると、どうやら春乃からメールが届いているようだ。
由奈は手早く操作すると内容を見て、一言返信すると携帯を仕舞った。
「今から春ちゃんさんとあの人がこっちに来るそうです」
それから何分も経たない内に2人は現れたのである。
「なんて言えばわからんが、来てくれてありがとう?集まってくれて?いや、なんかよくわからんがとりあえず待たせてすまん」
いつもと違いオールバックに髪を整え、服装を整えている伊達メガネを掛けた優也が席に着いている3人へと言葉を投げた。
「えっ?誰?」
明日香は現れた人物が誰かわからずにそう返す。
……これ、青井のを入れたら3度目だよな。天丼とかマジ笑えないんだけど……
内心で愚痴りながら優也は口を開く。
「御手洗だ。お前と同じクラスに今通ってる御手洗 優也」
「ほんとに!?いつもと全然違うからわからないわ……」
返ってきた明日香からの言葉に対して優也が言葉を投げる。
「まぁ、本当は俺だとバレたくなくて変装みたいな感じで考えてたからな。無理はないっちゃ、無理はないな」
「じゃあ、隣にいるのは春乃ちゃん?」
「うんっ。こんばんは明日香ちゃん。急に呼び出してごめんね?」
春乃は優也の言葉に反応を見せた明日香に頭を下げた。
「で、お前ら悪いなこんな時間に。飯まだだろ?折角だからなんでも頼んでくれ。青井、お前も好きなの頼め。で、俺と青井はどこに座ればいい?」
「あっ、じゃあ私が由奈ちゃんの隣へ行くわ」
と、尋ねた優也に対し、明日香はそう答えると由奈の隣へと移動したのである。
6人がけの大きめなテーブルの入口から見て奥側の窓際に利一君、由奈、明日香の位置取りとなった。
「青井は窓側でいいか?俺が通路側の方が何かと便利だろ?みんな俺の無理に付き合ってくれてんだ、ドリンクバーでもサラダバーでも可能な範囲で取りに動きたいからな」
「えっ、う、うん……」
優也の言葉を受け、春乃が窓側の席に着くと、優也は通路側いっぱいに寄った所に腰を下ろす。
「あぁ、さっきは悪かったな利一君。ちょっと久しぶりの妹からのお願いだったから、焦りすぎたっつーか、追い込むような形になってしまってな」
「別に構わねぇよ」
頭を下げる優也に対し、利一君はそう答えた。
「あ。辻は来てないのか。できるなら、そちらさんのメンバー全員揃ってる時にきちんとお願いしたかったんだが……」
「大丈夫よ。リーダーは利一くんだもの。利一くんが受けるか受けないか判断するわ」
優也が依頼の件でメンバー全員ではないことに対しての言葉を投げると、すぐさま明日香が答えた。
「まぁ、受けるなら受ける、断るなら断ると明日、妹とその友達連れてきて直接話させるから、その時に判断してくれ。俺からだけ頼むとかそんなのおかしいからな。依頼するってことは双方にリスクが生じるんだ。その責任くらい自分で取らせるさ」
「へぇ……意外と考えてるんですね」
優也の言葉に対し、反応したのは由奈だった。
「そんなもん当たり前だ。俺なんて友達いないし、彼女欲しいとか思ったこともないからな。なんでも自分でしなきゃいけなかったし、考えてどうにかするしかないんだよ。そんな俺が身内に出来ることなんて、力の限り守ってやるか多少のわがままを聞いてやるか、責任の大事さを教えてやるくらいだ」
……失礼な奴だなこのマルチーズ。
なんて思いながら、優也は自分の考えを述べた。
「友達いないんですか?」
「逆に聞くがいる様に見えるか?」
そんな優也にまたしても由奈が言葉を投げるが、優也は一言で切って捨てた。
自分が放った言葉に空気が重くなりそうだなと感じた優也は再度口を開く。
「俺からしたら友達って言葉程信じられんからな。ただ俺が必要以上に怯えてるだけかも知れんが。友達を気軽に作れるお前らは俺から見たら羨ましい位に強くて出来た人間だよ」
優也が言い終わったとほぼ同時に綺麗な感じの女性店員さんがメニューを持ってきたのだった。
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