第1章

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 同じような価値観、もしくは同じ階級に属する者。  あるいはその階級に属したい友人達が必然的に周囲に集まり取り巻きというものを形成する。  それは花の蜜に蝶や虫が集まるようなもので自然であるし、また当たり前でもある。  もちろん全ての蝶や虫たちと付き合う必要は無い。  だが基本的に社交的でもある彼女は不思議なことにそういう取り巻きを少数でもはべらせたり共に行動することはしないのだ。   別に彼女自身が嫌われているわけでも孤立してるわけでもない。   実際にクラブやイベントで見かける度に彼女にお近づきになりたい人々が周りに集まっていた。  でも彼女はその人々を優しく受け止めてはくれるが決して近くに居させようとはしなかった。  そういう意味でも彼女は有名でもあったのだ。  だがここ最近、そこに一人の例外が現れる。  それが件の真田友和君だ。  別に凄いイケメンでもなく、洗練されたセンスや仕事をしているわけでもない普通の学生。   確か北陸の出身で真面目な人柄ではあるらしいと彼と同じ大学に通う友人からはそう報告を受けている。  確かに彼女の周りには居ないような人間ではあるけれど、特別珍しい人間でもない。  それでは恋人同士なのかと言われれば、どうもそうでは無いらしい。  前に彼女との関係を問われた彼は困った様子で『師弟関係?』と答えたそうだ。  また噂好きの友人達から聞いた二人の会話は『教師とできの悪い生徒』または彼の言うとおり『師弟関係』というような様子で、どうも風変わりな間柄なんだそうだ。  とはいえ、彼も別に師弟関係とは言っていても言われっぱなしでは無いらしく、ホールや会場の隅でちょっとした喧嘩をしているのをたまに見かけてはいた。  だが数日から一週間もすればまた一緒に行動をしている。  というわけで真田友和という人間は僕も間接的には知っているというわけだ。  まあ人それぞれ価値観は違うし、直接会話をしたわけでもない。  文字通りただ顔は知っているというくらいかな?  同学年ではあるけれど互いのクラスが離れているので交流が全く無い同級生という喩えが一番わかりやすいかもしれない。
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