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当然、首を傾げられたけれど、僕は気にとめない。
「プレゼント」と言いながらさらになかば押しつける。
困惑しきりの偽物さんは「なんですか、急に……?」と、喜ぶどころか不気味がっているようだ。
しかし引かずに、そのことばを口にする。
「着替えてきなよ、僕はもう少し店番してもいいからさ」
「え……?」
「はい、立って立って」言いながら、僕は入口を指差し、箱を渡す。
なんとか受け取ってくれた偽物さんは半信半疑で立ち上がるとなかへ入っていった。
やがてびりびりと包装紙を破る音につづいて、
「う……そ……?」
驚愕のつぶやきが聴こえる。
思わずにやりと笑んでしまった。僕の行動に終始、呆気にとられていた店長がいきなり笑んだ僕に怪訝な視線を向けてくる。当然だ、彼には彼女のつぶやきは聴こえていないのだから。
取り繕うように僕は、売り子を再開する。
「おいしいケーキがさんぜんえーん♪ いかかですかー♪」
――数分後のこと。本物と同じ格好をした偽物サンタがあらわれる。
彼女に渡したのは、サンタ長仕様のサンタ服、そのレプリカだ。ゆえに帽子はただの防寒具である。
その姿を確認するとひとりで頷いてから、僕は店長さんに向けて言った。
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