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そして今夜、サンタクロースとして五回目、サンタ長としては初のクリスマスを迎えようとしている。僕はサンタの格好をしたまま、街をブラブラ散歩中だ。
幻想的にちらほらと雪が舞うなら、どこからか聴きおぼえのあるクリスマスソングが流れ、人の賑わいもある街中に薄く積もった雪を踏み締めるように歩く。
イヴと言うこともあって僕の格好もさほど注目を集めない。
誰も本物などとは思っていないのだろう。本物の存在すら信じていないのだから当然だ。
むきゅむきゅと歩いて、なんとなく人の流れの出どころに向かっていた僕はそれを見つける。
駅前の大きな時計台が街のイルミネーションのなかに浮いていた。電飾のひとつもつけられていない、そのアナログな時計の長針と短針が示す時刻はまだ午後七時前。
その時計台の周りには数名の人間が立っている。待ち合わせ場所にでもなっているんだろう。
そんなことを思いながら歩を進めていた、そのときだった。
「なんだってー!? 大丈夫なのかいそれはっ!?」
思わず声のしたほうに視線を向ける。駅のすぐ横、そこはどうやら洋菓子屋さんらしく、その店先のひさしの下に置かれた長机とパイプ椅子、その机上や椅子の横に並べられ積まれた箱があった。
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