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 と、そこへ。 「ケーキくださぁい!」  ひと組の親子連れ、その娘さんのほうが千円札三枚を天高く突き出していた。 「いらっしゃいませ、ありがとうございます!」と言いつつ、椅子を立ち上がり三枚の紙幣を取りに行くと、その腕をばっと下げられた。  何ごとか。  思わず、母親の方に視線を向ける、サンタ長の広い視界の端で娘さんも母親を見て首を傾げていた。  母親の口が動く。 「さっきの……」  そのひと言ではっとなった。心のなかでアクセルを踏み込む。 「イラシャマセー! ケーキヒトツデヨロシカー!?」  全力投球で外国人を装う。娘さんの顔面が、地元民にとっては最早観光地とまで呼ばれているようなクリスマスイルミネーションに心血を注ぐ一般家庭の庭先レベルにまでライトアップされる。  まばゆい笑顔だった。 「よろしですよー!」 「アイヨー! ヒトツナラサンゼエンポッキリネー!」
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