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 ふたたび天高く突き出された手の三千円を両手で受け取る。 「ハイ! ジャコレケーキデスヨー、キヲツケテモッテカエリヨーシャチョサーン!」 「はーい!」  机を回り込みかがんでケーキを渡したところで、声。 「領収書いただけます?」  立ち上がる。 「アイアーイ!」ふっと、目が合った。「カシコマ……りました」  照れてしまった僕。逆に恥ずかしい。くすりと笑われながらそそくさと椅子に戻り、領収書をちぎってはペンを手にする。 「宛名はいかがいたしましょう?」 「『上』で」 「『age』でも良いですかー?」 「……『上』でお願いします」 「……かしこまりー」  この人は『age』sage、『上』ageだった。お願いされたならしかたがない。底辺の棒がしゅるんとカール気味の未練がましい『上』と3000を書き、判子を捺すと渡す。 「ありがとうございましたー!」  言って、礼。  親子そろって手を振ってくれた。無視した。
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