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03
それから約一時間。客足は徐々に店先の僕のほうにも流れてきて、積まれていたケーキの数が半分ほどまで減っていた。
そんなことを確認したときだ。店長が忙しい店内の間隙を縫い、外に出てくる。
「代わりの子は九時に来られるみたいだからあと一時間だけがんばってね」
それだけを言うと肩を叩き、店に戻っていく。
了解したよ店長。
それからまた数十分のあいだ、美味しいケーキ三千円、と席を離れ声をかけて回っていると「すいません」と逆に声をかけられた。
見るとまたも親子連れ。お母さんと息子さんが立っている。
「はい、なんでしょう?」
答えながら席へ戻る。
「ひとつ、いただけます?」
口にするお母さんの隣で、息子さんが僕に熱視線を向けているのを感じながら、答える。
「ありがとうございます!」
そしてお母さんが財布から紙幣を取り出したとき、息子さんが僕に向かってたずねる。
「ほんもの?」
――この子供、ただものじゃあないとサンタ長の本能が語っている。なんせ一発で僕の正体を……!!
「おー、よくわかったねー」
僕は正直に答える。街はクリスマスムード一色でサンタの格好をした人間はいくらでもいるのだ。
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