03

2/3
前へ
/13ページ
次へ
「証拠は?」と息子さん。  最近の子供はこれだから……と内心で嘆息しながら「あー、またこの子は……」というお母さんのつぶやきを聞きながしつつ僕は告げる。 「じゃあ、今日、きみが好きなおもちゃを靴下にねじ込んでおくよ。何がいい?」 「プラレール!」  子供は即答。 「レールでぱっつんぱっつんになった靴下が明日の朝、きみの枕もとにあることだろうね」  僕も即答。  お母さんが凄まじい目で睨んできた。  出された三千円を引っ込められる前に受け取っては、ケーキを渡す。 「ありがとうございましたー!」  何ごともなかったように会計を済ませる。 「約束だからね!」  去りぎわに言ってきた子供を無視。睨んできたお母さん(超おっかない)も無視。  そのあと、どうやったらうまい具合に靴下にレールが収まるかを考えていたら、あっという間に九時前である。ピンチヒッターももうすぐ終了だ。 「お疲れさまでーす」  かけられた声にそちらを向くと、店の入口前に立ち止まる女性がいた。 「おはようございます」  長く濃い茶髪の彼女は、だいたい僕と同年代くらいにみえた。僕があいさつすると会釈を返して店内へと入った。即座に耳を澄ます。 「おはようございまーす」 「いやあ、急に悪かったね」 「いえいえ、とにかく怪我がないみたいでよかったですよね」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加