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「証拠は?」と息子さん。
最近の子供はこれだから……と内心で嘆息しながら「あー、またこの子は……」というお母さんのつぶやきを聞きながしつつ僕は告げる。
「じゃあ、今日、きみが好きなおもちゃを靴下にねじ込んでおくよ。何がいい?」
「プラレール!」
子供は即答。
「レールでぱっつんぱっつんになった靴下が明日の朝、きみの枕もとにあることだろうね」
僕も即答。
お母さんが凄まじい目で睨んできた。
出された三千円を引っ込められる前に受け取っては、ケーキを渡す。
「ありがとうございましたー!」
何ごともなかったように会計を済ませる。
「約束だからね!」
去りぎわに言ってきた子供を無視。睨んできたお母さん(超おっかない)も無視。
そのあと、どうやったらうまい具合に靴下にレールが収まるかを考えていたら、あっという間に九時前である。ピンチヒッターももうすぐ終了だ。
「お疲れさまでーす」
かけられた声にそちらを向くと、店の入口前に立ち止まる女性がいた。
「おはようございます」
長く濃い茶髪の彼女は、だいたい僕と同年代くらいにみえた。僕があいさつすると会釈を返して店内へと入った。即座に耳を澄ます。
「おはようございまーす」
「いやあ、急に悪かったね」
「いえいえ、とにかく怪我がないみたいでよかったですよね」
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