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レジへと、店内の客の視線を一身に受けながら到着する。勘定書きを差し出し、店員がすみっこの落書きへ怪訝な視線を向けたあとに言う。
「あの、お連れのお客様から伝言があるんですが」
自腹の百円と舞踏会終わりの硬貨群をカウンターへ差し出してから店員のひと言に反応する。
「え?」
店員は戸惑いがちに青年の問いを再現する。
「『きみにとって十二月二十五日は、なんの日?』」
黙秘権を行使する必要はない質問だった。だから少年は、その答えを思わず、店員に向けて口にする。
「そうだな……一年のなかで誕生日よりも浮かれる日だな」
心のなかで、あのサンタ長ならば、きっとどこかで自分の返答を聞いていると、そんな確信に満ちた声をしていた。
(おわり)
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