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2025年、日本は2020年のオリンピックを無事成功させ経済的に大幅に成長を遂げた。第二次高度経済成長期とも言われていた。世の大富豪は豪快にお金を使い続けた。
しかし変わらないものもある。高校3年生は大学受験のために予備校に行き、勉強をする。その姿はここ10年変わらない。永松敦もその一人だった。
「あっついな~~~」
井の頭線渋谷駅を出ると熱風が敦を襲った。敦は高校3年生。大学受験生だ。
夏休みの今は渋谷にある予備校通いが毎日の日課となっている。高度経済成長期と言われている現在だが、受験生にとってそんなもの何も関係がなかった。
敦が通っている予備校は歩いて5分ほどだがそれでも汗をかいてしまう。
「やっとついたーーー。教室バカ涼しいーーー」
敦はいつもの自分の特等席である教室の一番後ろの一番右に座りスマートフォンでサッカーの動画を見始めた。
「あーーーーサッカーやりたいーーー、勉強なんてやだーーー」
すると前方から声がした。
「なーに言ってんのよ。大学合格したら散々できるでしょ!」
高校、予備校とも同じクラスの佐藤由香だ。
「おー由香、おはよ。大学なー。合格できるかなー」
「あなたは受かるよ、要領いいし」
「それな」
敦は誇らしげに笑みを浮かべた。敦は高校のテストでも毎回クラスで上位に入っていた。サッカー部と勉強を両立していた、まさに文武両道を形にしていた。
「でも勉強しないと落ちるんだからね!」
そういって由香は敦の列の1番前に座った。由香は勉強はしているのだがあまり成果に現れない。しかし、プライドが高く敦に勉強方法を聞くなどは絶対にしなかった。
「素直に勉強方法聞けば、教えてあげるのによ。そういや今日生徒すくねーな」いつも満員の教室に今日は敦と由香含めて5人しかいなかった。教室にいる皆もそう思ったのかラインやら電話やらをしている。
授業開始時間になってもほかの生徒も、また先生も来なかった。
なんだよこれ、電車でも遅延してるのか?
敦はスマホからツイッターを開こうとした。しかし、なんと圏外になっている。
その時由香が声をかけてきた。
「ねえ、なんでみな来ないの?携帯電話も使えないんだけど」
少し不安そうな顔をしている。
キーンコーンカーンコーン。
このチャイムが始まりの鐘だったのだ。
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