第3章の続き

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 いつか千里が由布院へ行きたいと言っていた気がする。  大分県にある女に人気の温泉地だ。  確かKEIKOの実家が大分の有名な料亭だったはずだ。  そこへ寄ってみるのも良い。  そうだ、真理子の出身地が四国ではなかったか。  やはり西へ行こう。  こんな時だというのに、女のことばかりが頭に浮かんでくる。  呑気な自分の脳みそに思わず苦笑したその時、扉の向こうで物音がした。  玄関のドアが閉まる気配がした。  再び携帯を左手に握り囁いた。  「出てきたぞ」  千里の息遣いが聞こえた。  さあ、どっちに来る。  「エレベーターはまだ動かないよ」  そう千里が囁いたと同時に非常扉のノブが下がった。
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