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いつか千里が由布院へ行きたいと言っていた気がする。
大分県にある女に人気の温泉地だ。
確かKEIKOの実家が大分の有名な料亭だったはずだ。
そこへ寄ってみるのも良い。
そうだ、真理子の出身地が四国ではなかったか。
やはり西へ行こう。
こんな時だというのに、女のことばかりが頭に浮かんでくる。
呑気な自分の脳みそに思わず苦笑したその時、扉の向こうで物音がした。
玄関のドアが閉まる気配がした。
再び携帯を左手に握り囁いた。
「出てきたぞ」
千里の息遣いが聞こえた。
さあ、どっちに来る。
「エレベーターはまだ動かないよ」
そう千里が囁いたと同時に非常扉のノブが下がった。
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