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可憐な死神-Sniper-
5年後――闇夜の銀世界をオーロラが玉虫色に染めている。その林の中、灰色がかった緑色のコートに身を包んだ小柄な人物が、布製のライフルケースを背負って足早に移動していた。
その人物は林の外れまで移動するとしゃがんでライフルケースを開く。中身は細身な木製ストックと相対して大口径のズームレンズのスコープを装備したボルトアクションライフルに長距離射撃のために設計された.243ウィンチェスター弾薬の箱、そしてその弾薬が装填された3つの弾倉だった。
“狙撃手”は右手袋の指のカバーを取り、弾薬箱から1発取って暖かい息を吹掛けて遠くを見据えながらエジェクションポート(排莢口)から直接弾薬を装填する。
狙撃手の見据える先からエンジン音が微かに聞こえ出し、狙撃手は弾倉をライフルに装填すると、開いたままのライフルケースに寝そべる。
狙撃手がスコープを覗き、接眼レンズの上にあるノブを捻ると、シンプルなスコープの十字が中央だけ細くなっているデュプレックスタイプのレティクルの中心に、赤い光点が浮かぶ。スコープの反対側からは、狙撃手の鳶色の眼が大きく映り、空のオーロラと赤いレティクルが反射した。
しばらくして、オーロラを影が横切った。狙撃手はすぐに影の動きを見越して照準するとゆっくりと呼吸し、引き金を絞る。
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