可憐な死神-Sniper-

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 銃口から火を噴いてスコープの視界が反動でブレ、一瞬の間を置いて影から点のような火花が瞬く。狙撃手はスコープから目を離さずに素早くボルトを操作すると、スコープで捉えていた影から橙色の光線が風切り音と共に狙撃手の頭上を通過して林の木の枝が数本折れ、杉の幹にも弾痕が開いて狙撃手の脇で雪が一瞬高く舞上がると、エンジン音が聞こえていた方角から鋭い掃射音が響いた。  狙撃手はそのまま次弾を発射すると立上り、安全装置をかけたライフルをケースに仕舞って移動する。辺りに聞こえていたエンジン音は一定のものでは無くなり、徐々に大きくなったかと思うと林の向こうに何かが墜落して小さく炎が上がった。 「撃墜したわ」  墜落現場に移動した狙撃手は、口元を覆っていたマフラーを緩め、耳の孔にイヤホンのようにはまっている立方体のウェアラブル端末、キューブリックを使用してどこかへ電話する。 『何だった?』 「言ったでしょ?“撃墜した”って……でも反撃してきた時の反応の感じは無人偵察機だったと思うけど……それと武装は多分MP7だったわ」 『帝国軍のUAVね……』 『もしかしたら帝国軍の特殊部隊が付近に潜入しているかも知れない。すぐに部隊を送るから、合流してくれ。その後追って指示を出す』 「分かった」 『キューブリックに座標を送る』  狙撃手は周囲を見回すと、再び移動を開始した。 数分後――2人の兵士が疾走していた。その数百m後方、数十名の武装集団が、2人を追跡していた。  この場の全員が異なる戦闘服だったが、この土地の気候に合わせて白、またはそれに準じた色調に偽装した服や武装で固めていた。 「ハァッ!ハァッ!ハァッ!も、もう……振切ったかな?」 「どうやって確認しろってんだ!?」 「どうせ、追いつかれるなら……っ、確認も兼ねて、反撃しないか?」 「待伏せか!?」 「ああっ、そうだ!」  2人は木の幹と窪みの裏にそれぞれ回込んでベルギー、ファブリック・ナショナル・ハースタイル製のSCAR-Lとドイツ、ヘッケラー&コッホ社製のG36Cというポリマーフレームの突撃銃を構える。  しかし、振返ってもそこは一面の銀世界。雪のスクリーンがオーロラの光で変色していく。 「見えるか?」 「いや……振切ったんじゃね?」 「……」image=505566368.jpg
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