第1章 自殺者救済法

2/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
夏の昼下がり。 うだるような暑さで目が覚めた。 寝ぼけ眼でクーラーのリモコンを探す。 『ピッ』 無機質なクーラーの音が蒸し風呂のような部屋に響く。 次第に部屋の中がクーラーの冷気で満たされていく。 また今日も無意味な1日が始まった。 『今年でもう10年目か・・・・』 死んだ魚のような目で窓から外を見つめる。 西山カズトは現在25歳。 10年前の中学三年生の夏にこの部屋に引きこもり始めた。 風呂やトイレ等、必要最低限の事以外はとにかく部屋で過ごした。 外出といえば、希に深夜の人が少ない時間を見計らい、近所のコンビニに雑誌や夜食を買いにいく程度。 ひたすら現実から目を背け、気がつけば10年という途方もなく無意味な時間を過ごしてしまった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!