自転車と馬の競争曲

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車輪を回すのは、思考を巡らすのに似ていると思った。子供の頃から自転車やオートバイ、原付バイクなんかの風を浴びられる乗り物が好きで、仮面ライダーがバイクに乗って登場するのはいつみても興奮したことを覚えている。街中でバイクなんかを見かけると『仮面ライダーだ』と心の中でガッツポーズをしていた。心の中なのは恥ずかしかったから、あとは、私は女の子だったから男の子が見るような特撮アニメなんかに興味があるなんて知られるとからかわれることがあったからなるべく控えめに応援してた。 それつながりではないけれど、競輪も好きで複数の自転車が一番を競い合う姿は思わず目を奪われてしまったものだ。 弱肉強食というのは大げさかもしれないが、スポーツは弱い者と強い者の落差が現れるし、ニュースでもてはやされるスポーツ選手の背景にはどれだけの敗者がいるのだろうかと思うとやっぱり弱肉強食なのだと思う。 車輪を回すように思考が回る。取り止めのない思考が水蒸気のようにモヤモヤと膨らんで消えていく。 世の中のスポーツ選手に限らず誰もがやりたいことや、したいことを目指す。現実を見据えて会社員。自分の特技を生かしてスポーツ選手。曖昧な夢や目標を目指すこともあるのかもしれない。 だけれど、私にはこれとったことがない。篠崎夢子(しのざき、ゆめこ)高校一年生は青春特有の悩みをあるのだった。 高校生になることに特別な楽しみがあったわけじゃない、高校生デビューというのがあるとは思ってなかった。小学生から中学生に上がるときもさして変わらなかったのなら、高校生になってもきっと変わらない、事実、何も変わらなかった。 とにかく何もやりたいことがない高校生、青春小説の平凡な高校生みたいだと思うと何かいいことあるかなーなんて取り止めのないことを考えたがややっぱり何も起こらない。 平凡、平坦な人生、苦もなく、楽もない人生だ。 「篠崎さぁーあれだよね。溶けたアイスみたい」 「んだとぉー」 やる気もなく友達の愚痴に聞き返す。 「えっとね、アイスみたいっていうのはいっつもヌボーっとしてるから、溶けてべしゃーってなってるアイスみたいだなって思ったの」 思ったのじゃねーよ。人のことをアイスみたいとは何事じゃ、舐めると甘いか、実際に舐めてみたが汗の味しかしなかったし、友達がブッと飲んでいたお茶を噴き出していた。汚い奴め。
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