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「そーいう、道子もやりたいこととかないじゃん、いつもヌベーッと生きてるじゃん、ぬりかべみたいにヌベーッって」
「誰がぬりかべか、真横にひろいってか、でっかいてか、そーか、そーか、じゃあその役立たずな頭をヌリヌリじゃー」
ヌリヌリってなんじゃーと叫ぶ、ああ、やめて私の貴重な脳細胞が水蒸気になっちゃうんだよぉーと言うと、道子はなれなれとさらにグリグリしてきた。
山田道子(やまだ、みちこ)と篠崎夢子。名前が子の繋がりと席が近かったから友達になった。女の子同士だから友情以上の何かは芽生えない。たぶん、芽生えたらヤバいと思うし、その予定はない、というか、道子は恋多き乙女さんなので私にはそういった感情が向くことはないというか、向かれても困る。
「んだー、自転車をこきこきこーき」
と音程を外しまくりながら歌う、自転車の二人乗りだ。道子が後ろで私が前に乗って自転車をこきこき、誰も見てないということで声が高くなる。自作の曲を恥ずかしげもなく歌えるのだ。
「あれだねー、篠崎はアーティストさんになるべきだよ」
「アーティストさんて何者か。私の歌唱力でアーティストさんになれたら世界が滅ぶね」
「世界っつーか、聴いた人の鼓膜が破壊されそうだね、もう道子は耳が痛い」
「あー? あんだってー? 私の歌唱力なめんなよー。どっかのガキ大将クラスだぜ」
「青狸呼びたくなるね。秘密道具でこいつの声、出さなくしてくれって頼みたくなるね」
「夢も希望もないなー、でも、秘密道具あればすぐに億万長者になれそう」
完全犯罪とかできそう。
「そういうのはすぐにトラブルに陥ってっていうオチがあるからねー、篠崎の場合、脳みそがあーだから騙されてスッカラカンだね」
あーってなんじゃーっと叫びながら自転車をこきこき、二人乗りってけっこう難しいけれど道子と乗るとかなり上手く乗れるのだ。そのせいか気分もよくなって歌を熱唱する。道子に下手くそーと言われるが気にしない、道子の両胸がムニューって当たるけど気にしない。ぬりかべになれと叫んだりしない。
「ねーねー、道子さんや」
「なんだね、篠崎さんや」
「お腹、すきましたなー」
「それは言わない約束ですよ」
「お腹、すきましたなー」
「それは言わない約束ですよ。お財布には五百円しかないんだから、ゴホゴホ」
「道子さんやー、靴に一万円、隠してるでしょう」
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