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喜びの余り「和臣っ!」と扉を開けたのと同時に叫びたい気持ちを、両親の前だからと圧し殺した。
圧し殺して、その扉を平静を装って開ける。
だけど、カチャリと静かに開いたドアの先の広がる光景に、瞬時で頭がついていかず、思わず声が漏れてしまった。
「か…ず?」
そこは、ごくごく普通の一軒家に見あった、ごくごく普通にありふれたリビングで。全体的にフローリング広がり、真ん中には二人掛けのソファーが二脚、テーブルを挟んで合い向かいに並べられている。
そのソファーには、3年前より少し大人びたように見える和臣が座っていて、和臣の相向かいには親父。それから和臣の隣には…、何故か知らない女が座っていた。
オレの戸惑いなんて知ったこっちゃないように、和臣がオレに気がつき、こっちを向いて笑う。
「兄貴。久しぶり」
その笑顔は、昔より大人びた顔つきをプラスしても、3年前と変わらず綺麗で少し妖艶で。
なのに、今日はどっか冷たくて。
例えるなら“悪気のない悪魔”みたい…だった。
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