STORY 1

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――ドルフィンダイブの控え室。 アキヒロがドアを開けると、大の字で堂々と熟睡しているマッツー。 「zzz・・・」 「・・・風邪ひくぞ」 そう言いながら適当な所に座り、飲み物のふたを開ける。 「・・・」 ため息をつくアキヒロ。 ・・・ツヨヤギと別れる際に感じた、あの"変な感覚"が少し気になる。 「・・・んあ、朝か?」 アキヒロに気付いたのか、マッツーがバカな声で目を覚ました。 「夜だバカ」 「あっそ、おやすみ・・・」 「寝るなバカ」 「了解」 一息ついて、体を起こすマッツー。 「あれ?アッキー、ツヨヤギは?」 「ああ、アイツなら雑誌読んでるよ」 「ふ~ん・・・」 立ち上がり、伸びをする。 「あ、そうそうアッキー」 「なんだ?」 「さっき、クールボーイと関西弁ボーイがここに来たぞ?」 「・・・は?」 「なんか『アキヒロの客だ』っつってたぞ?」 手をアゴの下にあてて考えこむアキヒロ。 自分の記憶の中を探検してみる。 『クールボーイ』と『関西弁ボーイ』・・・。 ――見当のつく人物が確かにいる。 その人物はしばらく会ってない2人だ。 「アッキーいなかったから帰ってもらったけど」 「・・・アイツ等、なんの用事だ・・・?」 久しぶりに会う事が何を意味するのか考え込む。 ただ『久しぶりに会うだけに来た』と言うわけではなさそうな2人だからだ。 あの2人とは、『用件』でつながる事が多い。 ――突然、アキヒロの携帯が鳴り響いた。 自分達のオリジナル曲の『着うた』だ。 今の時代、音源をある会社に送れば『着うた』をつくってくれる所がある。 着信はメールではなく電話だった。 発信主は・・・。 「誰から?」 「ツヨヤギからだ・・・」 電話に出る。 「もしもし?どした?」 「・・・」 ・・・返答がない。 「・・・?ツヨヤギ・・・?」 「・・・」 ・・・またしても、返答がない。 ・・・アキヒロは眉間にしわをよせる。 「おい、いったい、なん・・・」 「・・・佐久間アキヒロか?」 「・・・!?」 アキヒロの声を割って聞こえてきた電話の向こうの声。 ・・・ツヨヤギの声ではない。 中年の男の声だ。 だが、向こうの携帯はツヨヤギのものだ。 「誰だ・・・?」 低いトーンで聞き返す。 「・・・警察だ」
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