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・・・ユキンコが人間観察をしている内に、演奏本番の時間になった。
客もまだかまだかと目をステージに向けている。
「よ~し、今日もツヨヤギのカッコいい姿を撮るぞ~!!」
そう言いながら鞄からデジカメを取り出す。
・・・その時、
そのカメラを取り出した手を誰かにつかまれた。
男の手だ。
「きゃっ!!」
瞬間的に悲鳴をあげ、視線をすぐさま掴んだ手の主に向ける。
だが、驚いたのもつかの間、
その主を見て、一気に恐怖がひく。
・・・知っている人物だからだ。
だが、知っている人物なのだが、表情が曇っている。
「ど、どうしたの・・・!?マッツー・・・!?」
・・・ユキンコの手を掴んだのは、
ステージ上に登場するハズのマッツー。
「悪いユキンコ、ちょっと来てくれ」
マッツーはそのままユキンコをつれ、ライブハウスの外に出た。
当然、客達もマッツーの事を気付かないわけがなく、
ライブハウスの全員がざわつきながら、
マッツーとユキンコが出て行く姿に視線を向けていた。
「皆さん」
そしてこの一言により、客の視線がステージにすぐに移る。
アキヒロがマイクでステージから呼びかけたのだ。
マッツー同様、表情が曇っている。
「・・・申し訳ありません」
深々と頭をさげるアキヒロ。
客達の頭の上にはハテナマークが浮かび上がる。
「今日のライブは・・・」
そこまでを頭を下げたまま言い、続きは頭を上げてから言った。
「中止になりました」
この一言から数秒間、沈黙が流れる。
しかし、すぐにざわめきに変わるのは言うまでもない。
客の中から「どう言う事!?」「なんで!?」などと、わかりきった発言が飛び交う。
・・・アキヒロは言葉を続ける。
「・・・さっき警察から連絡がありました」
警察、と言う単語だけで場内が再び静まる。
この状況で、"警察"と言う言葉は、嫌な予感しかさせない。
「ドラムの八木ツヨシが・・・」
・・・客はすでに不安の目であった。
「集団暴行事件に巻き込まれました・・・」
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