STORY 1

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――ライブハウスの裏・・・ 「ウソでしょ!?ウソなんでしょマッツー!?」 もう涙は流れていた。 そんな事はユキンコにとってどうでも良い事だった。 マッツーの両腕の服をつかみ「ウソ」と言う一言を求める。 「ウソじゃねえよ・・・」 現実に逆らう事なくユキンコの望みを潰し、とある所を指差すマッツー。 ユキンコが視線を移すと、1人のスーツの中年男がこちらへ歩いて来ていた。 中年男と言っても、オジサンと言う風貌ではなく、 凛々しい顔立ちをしており、鍛えられた体はスーツに包まれていても見てわかる。 「どうも、松永君、河村ユキさん」 その中年男は、薄い笑みを浮かべながら近付いてくる。 「残念だけど、悲しんでる暇はないよ?話を聞かせてもらわないといけないから」 「クソ田島・・・」 ・・・[クソ田島]と呼ばれたこの中年男・・・ 名前を[田島ノブハル]と言う。 この男は、豪天町のベテラン刑事。 現場仕事を長年続けている。 "GEN武"のメンバーやユキンコとはすでに顔見知りの仲だが、 彼等にはあまり良く思われていない。 もちろん、田島自身、悪い人間ではないのは当然だが、 街の若者からは敵視されるような職業だから仕方ない。 「おいおい、早速、敵視かい?」 「・・・」 睨みを利かせるマッツーと、冷静沈着な田島。 「ツヨヤギは集団暴行事件に巻き込まれたんだろ・・・?」 「ああ、そうだよ」
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