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――ライブハウス『ドルフィンダイブ』
アキヒロのバンド、"GEN武"の発信はここからであった。
高校時代、軽音楽部に入り、気の合う仲間となんとなくバンドを組む。
そして先輩のコネでこのドルフィンダイブにライブ出演。
その後は、アキヒロの社交性と、
"GEN武"のそこそこの演奏力・作曲能力が重なり人気が出たのだ。
ちなみに、バンド名の由来は、
ギターやベースの「弦」を武器にすると言う意味で、
神の名前である「玄武」をかけたものだ。
ライブを重ね、ある程度の人気を得て、今に至る。
「うわ~!脳年齢42歳だと~!?」
ドルフィンダイブの控え室で叫んでいる1人の男がいる。
あぐらをかいて、ベースギターを脚の上におき、両手をゲーム機で占領している。
脳年齢を測定する、かなり古いゲームをプレイしているようだ。
この男、名前を[松永クニサダ]と言う。
愛称は[マッツー]で、アキヒロと同じ年齢、
"GEN武"のベースを担当している。
黒髪のショートヘアーで、見た目はアキヒロとは正反対だ。
そのマッツーの背後のドアが静かに開く。
マッツーはゲーム画面から目を離さずに、ドアを開けた人物に挨拶を投げかける。
「遅いぞ、アッキ~」
「おう、悪い・・・マッツー・・・」
どうやらドアを開ける速度や音、
足音などでアキヒロだと判断したのであろう。
「てかアッキー、なんであからさまに元気ないんだよ?」
「財布落としちまってよ・・・」
「マジで!?かわいそう!!俺が金持ちなら分けてあげたい!!」
「入ってたの410円」
「銀行に金あんじゃねーか」
アキヒロはそのまま適当な所に座り、ギターを取り出しチューニングし始めた。
「所でよマッツー、ウチのドラムは相変わらず『アレ』のせいでまだ来てないのか?」
「ん、そうだな。多分『アレ』のせいで今日も遅れてるんだろうな~」
「ったく、ツヨヤギの野郎・・・」
ツヨヤギ。
・・・この奇妙なキーワードは、
実は"GEN武"のドラム担当の男の愛称だ。
「そう言えばさ、アッキー」
「ん?なんだ?」
ゲームの電源を切りながら思いついたかの様に話し出すマッツー。
「最近、豪天町で集団暴行事件がちょくちょく起きてるらしいよ?」
「マジで?物騒だな~・・・」
軽い返事のアキヒロ。
人間はなぜだか、殺人や傷害などの事件は、自然と他人事だと解釈してしまう。
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