STORY 1

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ライブハウスから出ると、外はすでに暗くなっていた。 「悪いなツヨヤギ、金借りるハメになって」 「いいよ別に。気にすんなって」 軽音楽部では、2人は先輩後輩の関係だったが、 バンドを組んだ時点で2人の壁はすぐに取れた。 「なぁアッキー」 「ん?」 「俺達ってさ・・・いつまでバンドできんだろ?」 ツヨヤギが星空を見上げながらつぶやいた。 「なんで急にそんな事言うんだよ?」 「なんか・・・不安なんだよなぁ~・・・」 「何がだよ?」 「確かに"GEN武"は人気あるバンドだよ。自分で言うのもなんだけど」 「まぁな」 「だけどさ、こう言うの、いつまで続けられるのかって考えるとさ・・・」 それを聞いてアキヒロは少し黙りこんだ。 自分はそんな事を考えた事がなかったからだ。 いや、正確には考えないようにしていたのだ。 「そんな事考えても仕方ねえだろ」 「ん~・・・まぁそうなんだけどね」 苦笑いするツヨヤギ。 心境をまぎらわすためだろう。 そんな会話をしていた2人は、気付けばコンビニへ到着していた。 「お、ウィークリードラムスだ!」 店へ入って早々、ツヨヤギが雑誌のコーナーへ反応し、素早くそこへ向かう。 アキヒロは飲み物のコーナーへゆっくりと足を運ぶ。 「いつまで続けられるか、か・・・」 適当に選んだ飲み物を手にしながら、そうつぶやくアキヒロ。 「確かにそうかもな」 ツヨヤギから借りた小銭をポケットから取り出し、すぐさまカウンターへ向かう。 ツヨヤギはまだ雑誌を立ち読みしている最中だ。 アキヒロは会計を済まし、ツヨヤギの所へ足を運ぶ。 「ツヨヤギ、何も買わねえのか?」 「ん~、ちょっとこれ読むわ。なんなら先に行っててよ」 「そうか・・・」 なぜだろうか。 この瞬間、アキヒロの頭に何か変な感覚が走った。 不安のような、悪夢が起きるような・・・。 「アッキー、どした?」 「ん?ああ、いや・・・なんでもない。じゃあ先行くわ俺」 「OK~」 アキヒロは複雑な表情でコンビニを出た。 自然と足取りが重い。 「・・・ただの気のせいだろ」 自分にそう言い聞かせ、ドルフィンダイブへと向かった。
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