第1章

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「へえ、そっか。男の先輩ならより安心だ。頼りになるしね」 「そ、そうだね。以外と頼りになる先輩だから、ちょっと今度お願いしてみるよ」 何もしてこない。普通の対応の啓太に少し違和感を覚えた。いつも男の話をすると平手打ちが飛んできていたのに、今日は全くそういうそぶりを見せない。何かおかしいと思ったが、この時は特に気にすることは無かった。 二人がしばらくの間話し込んでいると、大通りから一台の自転車が入ってきた。翔だった。翔は二人の前で止まると驚いたようなそぶりを見せた。 「あれ、高橋さん。こんなところでなにやってんの」 「どうも、先輩。以外と早かったですね。」 「あぁドラムの悠太(ゆうた)が気分悪くしちゃってね。高橋さんが帰ってから30分もしないうちに解散したよ。で、そっちの彼はお友達??」 「あ、うちの彼氏です」 「葉山啓太です。うちの律がいつもお世話になってます」 「へえ、本当に彼氏がいたんだね。高橋さんのその場限りの見栄だとばかり思っていたけれど。いやいや、二人の時間を邪魔して悪いね。邪魔者はそろそろ引っ込むよ。あ、それと高橋さん。明日の練習、これそうに無かったら早めに連絡してね。それじゃおやすみ」 そう言って駐輪場に自転車を止め「105」と書かれた部屋へを姿を消した。 「あの人が律の言ってた先輩か…あんま仲良くなさそうだったね。他人行儀なのか気の使いすぎか」 「そうなの、あんまり仲は良く無いんだよね。部室で二人の時とか全然喋らないし…むしろ嫌われてるんじゃ無いかな…」 「嫌われてたら挨拶されてないでしょ。 それより早く中に入ろうよ」 「そうだね。」 そう言うと駐輪場に自転車を止めて二人は「106」と書かれた部屋へ 入って行った。 「ねえ、練習って何時からなの??」 「二限だから10時半だよ。どうしたの??」 「じゃあ明日は練習休みにしてよ。それで一晩中俺を慰めて、ちょっと悲しい事があったんだ…」 そう言うと啓太は律をベッドに押し倒し、身体を重ね、強く抱きしめる。 「俺を癒せるのはやっぱりお前だけなんだよ、律の前でしか泣けない…」
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