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「じゃあ、私も試合に出ないことにするね」
言うなり、優奈は自分のロッカーに戻り、素早くレオタードを脱ぎ、いつもの短パンとTシャツ姿になって戻ってきた。
「ゆ、優奈?」
私は、あっけにとられて、呆けた顔で優奈を見た。
「早く練習にいこっ!れ~んふぁ」
笑顔で、優奈は私に手を差し伸べる。
私は、スクッと立ち上がり、優奈を見つめる。
「出ないって・・・?」
「うんっ」
私は、その言葉の重大さに気づき、顔色を変えた。
「ダメだよっ、そんなことしちゃ!」
優奈に私は詰め寄った。
「みんなに迷惑かかっちゃうし、コーチに怒られるよっ!」
「いいよ。ファムお姉ちゃんにも、一緒にたのんでもらうから」
優奈はいっこうに動じない。
「ダメだよっ!それに、優奈楽しみにしてたじゃないっ!妖精さんみたいに演技するって!ファムお姉ちゃんや、蘭おばさんに見せてあげるんだって!!それに、レオタード着るのもすごく楽しみにしてたんでしょっ!やっぱり、いけないって!」
私は必死に優奈を説得した。
だけど、優奈は私を見つめてこう言ったの。
「そうだけど・・・。でも・・・」
「でも?」
「れんふぁが出ないから、私も出ない。れんふぁが出なきゃ、私、イヤだよ・・・」
優奈は、目に涙を潤ませながら、私に言った。必死に泣くのをこらえていたみたい。
「れんふぁと、一緒に妖精さんみたいに演技したかったけど・・・れんふぁがイヤならしかたないよ。私も出ない」
泣きそうな声で、無理に笑顔を作りながらそう言ってくれた。
この娘、本当にこの日を楽しみにしてた。
私に、『一緒に妖精さんみたいに演技しようねっ!』って何回も私に言ってた。
優奈は笑ってたけど、試合に出れない悲しみは見ててまるわかりだった。
「れんふぁ、練習にいこっ。今はダメだけど、こんど、一緒にレオタード着て・・・妖精さんみたいに・・・演技しようねっ・・・」
悲しそうに、優奈は私に手を差し伸べてくれている。
泣きたいのを必死にこらえていた。
私は、優奈を見つめていた。
この娘、私の為に・・・。
私は、ぐっと歯をくいしばり、頑張って優奈にこう言った。
「ふふっん!何、言ってるの優奈!」
言うなり、私は胸を張る。
「じょーだんよっ!じょーだん!」
高らかに叫ぶ私。
「れんふぁ?」
「しんうちは、しゅやくは後から登場って、そうばはきまってるでしょ!」
私は、レオタードをサッとかざした。冷や汗流しながらだけど・・。
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