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そして、ドアの前まで来たとき、私は立ち止まった。
足がすくんで、ドアノブに手をかけることができなかった。
優奈は、傍で私を見ている。
足が震えてきた。
怖かった。
見せ物にされるんじゃないかと、私は怯えた。
大袈裟だけど、私は本当にこの時怖くて怖くて仕方がなかったの。
顔は真っ青になっていたと思う。
だって、他の人に自分の肌を必要以上に見せる事は、あの頃はすごくイヤだったから。
短パンとTシャツだけでも、あの頃は抵抗あったんだから。
今は別に気にしてないけどね、
私はもう、限界にきて、逃げ出そうとした、その時。
「!?」
私の左手が、急に暖かいものに掴まれたの気づいた。
私は左手を見た。
「れんふぁ」
優奈だった。
優しい笑顔で、私の左手を握って私を見てくれている。
「だいじょうぶだよ。れんふぁだったら、妖精さんみたいに演技できるよ。恥ずかしくなんかないよ」
優奈は、私の恐怖心を解くように、私に優しく言ってくれた。
「優奈・・・」
私は、優奈を見ていた。
すると、だんだん、怖くなくなってきた。
足の震えもしなくなってきた。
「いこっ!みんな待ってるよ!」
優奈は元気良く、私に言った。
私は、少し深呼吸して、
「うん。いこう」
優奈は、私の返事を聞くと、優しく手をつないで更衣室を一緒に出てくれた。
優奈の右手はすごく暖かった。
そして、みんなの前に出ていく時。
ずっと、私と手をつないでいてくれた。
時々、笑顔を私に向けて。
怖くなかった。
優奈と一緒なら。
本当に、この時は嬉しかった。
この時から、私と優奈は大親友になったんだと思うな。
そして、優奈は、次の本番の試合の時も私の手を握っていてくれた。
その時も、私は怖かったのを覚えている。
その時の、私の心の中を、優奈は知っていたんだと思う。
あの娘、私が怯えているときや、恐がっているとき、いつも私の手を握ってつないでくれた。
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