比良坂

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比良坂

……おかしい。 この先を曲がれば、あの坂に出て、アタシのアパートが見えてくるはずなのに。 坂のある場所に出られない。 ああ、もう、ため息が出る。 確かにアタシ方向音痴だけどね。 引っ越したばかりの町だからさ、慣れてないけど。 いい加減道を覚えろって話で。 明日の朝も早いから、早くアパートに帰りたい。 ちょっとでも遅刻すると、課長がうるさいし。 まぁ、当たり前の話だけど。 だからさ、帰って早くお風呂に入って寝たいのよね。 「こんばんは、お姉さん」 ……え? 誰? アタシに話しかけたのは? 「ここだよ、お姉さん。僕」 え? いつの間にそこに居たの? て言うか、今……深夜だけど、中学生? 君、中学生よね? 何をしてるの? あ、そうか。塾かしら? 今の子は大変だから。 「うーん……。塾って言えば塾かな? 止めちゃったけどね」
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