流転3

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俺達は座るが… 肝心の貴賓殿が居られない。 席に着いていたのは大佐だけ。 しばし待った様で、大佐の前には紅茶。 「遅かったわね。  矢っ張りリュシュ君が、何かしたんでしょ」 笑いながら告げて来る。 俺が何かしたのが前提なんですね。 酷くね? 「いやいや。  俺は大人しくしてましたよ」 そうだよね。 「そうなの?  あの気難し屋で有名なガプヌート曹長が、リュシュ君を熱心に勧誘していたじゃない。  ねぇ。  何したのかしらねぇ」 面白そうに言わんで下さいや! 俺には、爺に口説かれる趣味は無いっす! そんな事よりもっと。 「食事は、まだっすか?」 思わず尋ねる。 「ある方が来られるので、もう少し待ちなさい」 大佐に窘められる。 あれか? 主役は遅れて遣って来るってヤツかねぇ。 一体、どんなヤツなんだろ? んっ? ドアが開いて、誰かが入って来たな。 どら、どんなヤツ… おんやぁ? 見た事あるような… いや、絶対に、あの人だよな。 何で、こんな所へ? 「よお、爺さん。  こんな所で会うなんて、奇遇だなぁ」 俺が声を掛けると… 大佐とお姉さまが、真っ蒼になって慌てる。 「リュ、リュシュ君、何を!」 だが… 「列車以来じゃな。  青年よ。  奇遇も何も…  儂が会いに来たでのぅ」 あっ、そうなん? 「大将閣下。  閣下は、彼をご存知なので?」 大佐… 今、爺さんを、とんでもない呼び方で呼ばんかったか? 「ふぁふぁっ。  彼とは、列車で会ってのぅ。  シュパング人は珍しい故、乗客共々盛り上がってな。  なかなかに楽しき時を過ごしたものじゃ」 そんなんをね。 「そうでございましたか…  では、大将閣下。  閣下は、リュシュ殿へ会うためだけに?」 ああ、爺さんって…大将だったんだね。 って… 大物やん!?
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