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恰幅の良いおばちゃん…
「うちの旦那の奢りさね。
食ってやってくんな」
あや、女将さんっすか…
「頂きます!」
そう告げて、ワクワクしながら受け取ったんだが…
ワクワク?
へっ?
ちょっと分厚いが、普通のステーキ?
いや、脂身が少ない感じではある。
旨そうに焼けてはいる…
だが、なんの変哲も無いステーキ。
なんぞ、これ?
思わず、シンさんを見る、俺。
シンさん、ニヤリと笑って…
「此処の名物の1つだ。
まぁ、食ってみな」
さいですか?
再び、フォークで押さえ…
押さ、押さ、ええぇ~っ!
フォークが、ミルミル、埋まるよ、肉の中。
何、これ!?
ナイフで…
いやね…
力を入れなくても、スッと切れるんだよ。
切れ味鋭いナイフだなぁ~
えっ、違う!
わーとるわい!
切り取って…
口へ。
モグモグ、モグってな。
もうね、なんて表現して良いのやら…
違う食感の肉。
違う味わいの肉。
それを一度に口の中。
しかも、見事に調和して、口の中でオーケストラ。
主張しながらも協調。
もうね。
これが本当の口福、口幸です。
「スゲェ…」
もぅね…
他には表現がね。
ボキャブラリ狭いんっす、俺。
「凄い…か。
そうだろうな。
他の表現など、思い付かんか…」
納得のシンさん。
「これ…
なんの肉っすか?」
思わずね。
「いや、俺に訊かれてもなぁ」
困り顔。
「どうやったかは秘密だがな。
牛、豚、馬、羊、兎、鴨、家鴨、鶏…
複数の肉のあらゆる部位を削ぎ切りにしてな。
適切な並びで重ねて作った肉だ。
筋や脂身を除去し、良い所だけ合わせてから圧縮して張り合わせてある。
肉屋のダチと共同開発した肉でな。
枚数限定のオリジナルでぇい。
ちと、高いが…
一度食ったヤツのリピート率は最高よ!
みんな、コイツを食う為に、金を貯めてから来るかんよ」
そう言って笑う、オヤジさん。
って、嵌めたなっ!
うぬれっ!
俺も、リピーターになるしかねーじゃんかっ!
だって…
美味過ぎんだよ、これぇぇぇっ!
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