流転3

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「おまえ、観光で来たんだろ?」 頷く、俺。 確かに、そうだけどさ。 「此方で就職するつもりも、ましてや移民する気なんて、なかったんだろ?」 へっ? 移民って? 「移民って…なんっすか、それ?」 ホント、何? 「気付いてなかったのか…」 シンさん、溜め息。 はいっ? 「おまえさぁ、シュランプ国籍貰ったな」 まぁ、そうだね、うん。 頷くよ。 本当だもんよ。 「就職は、この国。  これは、決定だな」 そうだけど? 「住むのも、この国。  違うか?」 首を横に振るしか無いよね。 「この国に住んで就職し、国籍も持っている。  移民じゃなくてなんなんだ?」 えっ、あれ? あれれれっ? 俺って… シュランプへ移民? そんな、バナナっ!? 「更に、爺どもに貰った金に溺れてか?  仕舞には借金ってな。  それを元に操り人形か?」 ぐっ。 いや、そのさぁ… 「おまえは、まだ若い。  人生経験も浅いだろう。  そんなおまえを手玉にとるなど、爺達には容易いだろうな。  もう少し、考え考えて行動しろよ、おまえさぁ」 た、確かに… 結局、爺さん達の思惑通りになってんだなぁ… こ、こわっ!? 「説教じみた事して済まん。  だが、模擬戦とはいえ、俺と同等に空戦を行ったおまえだ。  リュシュ。  俺は、おまえをかってんだぜっ!  しっかりしろよなっ!」 バンッと、俺の背を叩くシンさん。 痛す! 「それで、爺どもから貰った金は十分そうだな」 頷く、俺。 すると、シンさんは席へ戻り、コックおやじへ告げる。 「おやじさん。  1人2つづつてぇのは、オス、メスで2つづつだよな、モチロン」 「かぁぁっ!  折角、良い格好を見せたのに台無しだぜっ!  この、ごうつくばりめがっ!」 そんな、コックおやじの言葉に、シンさんはニヤリとして告げる。 「ごうつくばりで結構。  で、どうなんだ?」 「ふぅ。  良いだろう。  ところで…  その坊主が、シンと引き分けたって、本当か?」 興味津々っすね。 「ああ、まあな。  しかもだ。  格闘技の教官達を、手玉にとったらしい。  こんなんだから、爺どもに、目を付けられてな」 俺の為に溜め息っすか… アザス!
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