流転3

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「で、シンさん」 「んっ?」 「そろそろ。  何を注文するつもりなのか、教えて欲しいなぁ~っと」 ほ~んと、なんだろね? あの沈着冷静なシンさんが、此処まで興奮する料理ってさぁ。 「ああ、それはな…」 「これでぇい!」 シンさん告げる前に、コックおやじ。 取り出しましたるは、海老と蟹。 っか… なぁ~んだぁ。 海老と蟹じゃん。 俺、ガッカリ、ガッカリ、ガッカリよ。 「こりゃ、デカいなっ!」 シンさんが驚く。 ? そんなに、デカいか? 「喜べ、リュシュ!  この国キっての珍味、ゾワイト蟹とガイヌ海老だっ!  コイツらは、シュヌ湖にしか生息していない蟹と海老でな。  しかも、産卵期直前が一番美味いと言われているんだ。  だが、産卵期前の捕獲には、制限が掛かってな。  市場へ出回る量は限られるって訳だ。  此処のおやじさんはなぁ、シュヌ湖の漁師に知り合いがいるんだ。  なので、特別に回して貰えるってな。  しかし、時期モノだ。  何時も入荷する訳ではないんだ。  地元の者でも、お目に掛かるのは珍しいんだからなっ!」 シンさんが、此処まで入れ込むなんて… 俺、興味津々です。 そして… まずは、ガイヌ海老。 ロブスターの様に、大きな鋏。 腹には、育ちきって無い、小さな卵がビッチリ。 まずは、卵をスプーンで掬って食べる。 これが、ネットリ濃厚な味でさぁ… 至福れす。 身も最高だったけどさ、ミソがまたねぇ。 ゾワイト蟹の方の卵とミソが絶品! 身の方も美味いが… ポン酢じゃなくて、マヨネーズソースなんだよね、これがさぁ。 まぁ、これも旨かったよ。 けど、ポン酢でサッパリとも、食いたかったかな。 蟹を4杯、海老を4匹、頂いてしまいましたよ。 シンさんが絶賛するだけあるね、これ。 ただね… 「これで、来年まではお預けだな」 そんなことをね。 「なんで?」 「この店の決まりでな。  一回でも食べたら、その年は無しってな。  他の者が食べられなくなるからな」 あれっ? でも、俺達… 沢山食べたよね?
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