流転2

56/64
前へ
/755ページ
次へ
「あら?  軍の仕事は、何も戦場へ出る事だけではないのよ。  兵器研究の研究員などもあるのだけど…  非戦闘員でも、候補には入らないのかしら?」 そんなん言われる。 軍、軍ねぇ… 間違っても、爺ちゃんにだけは知られないようにせねば… 曰く。 {龍覇術は所詮、人殺しの技。  戦場で役に立たねば意味は無いと知れ。  戦が絶えて久しい世じゃが…  心には、何時も戦場たれ} なんぞ、宣ってくれる祖父だ。 知られたら戦闘員として軍へ、叩き込まれる事だろう。 しかし…爺ちゃんかぁ… あの頑固爺には、色々と思い出がある。 アレは6歳の時だったか… 玖籐流の心得を説かれたんだが… {己を律し、他を治め、森羅を操し、界を制さん。  この意味が解るか、龍秀よ} ってな。 だからさ、自信満々に答えたさ。 {王道を説いたモノなんだろ?  カッケェー} ってな。 したらさ、拳骨だよ、拳骨! あん爺の拳骨は、半端無く痛い。 もうな、目から星…いや、火花だな。 {バッカモォォォン!  なんで、そーなるのじゃっ} ってな。 だから俺、言った訳よ。 {[己を律し]って事は、[自分を厳しく保て]って事だろ?} 頷く祖父。 合ってんじゃん。 そんなん思った訳。 続けて言ったね、俺はさ。 {[他を治め]ったらさ、[民を導き治める]ことで、[森羅を操し]は[治水事業]の事だよな。  そして、最後の[界を制さん]ってのは、世界を制覇する事じゃん。  覇王道?  カッケェー} でっ…また、拳骨。 ひでぇっす。 {バッカモォォォン!  [他を治め]とは、自分以外を認識内に知覚する事。  [森羅を操し]とは、龍気にて自然をも操る事じゃ。  そして[界を制さん]とは、戦いの空間、所謂、場を制す事。  玖籐流の基本極意じゃ!  良く覚えておれっ!} ってな。 っかさぁ… 6歳の子供に、無茶言うなっ! そんな爺なんだよ… 絶対に、知られたら不味いよな、これ。
/755ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4023人が本棚に入れています
本棚に追加