第五章 Double Rainbow

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俺はデニムの後ろポケットから長財布を出した。 「いらない。ビール一杯しか飲んでないしね。菜々子、今晩離してもらえないんじゃない?」 「当然じゃんか」 俺はこうやって求める。菜々子の心を。その証である菜々子の肌を。 何度も。何度も。何度も。 東京湾のベイエリア。 水面にきらきらと街の灯りが映っているはずの海沿いの道を、握った菜々子の細い指の感触だけを感じて俺は歩き始めた。 俺の意識に景色はなかった。あるのは菜々子の指の感触だけだった。 ひとつの建物の前で立ち止まる。
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