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自分の鎖骨の上で交差された、俺の腕に両手を引き寄せてかき抱くようにして菜々子が呟く。
「菜々子に触ってたやつ。あいつのこと思い出すと凶暴になる」
「ふわふわなんて! わたしの手の感触のほうがいいって思い知らせてやる」
そのホテルに入るために腕を解いた俺に向けられる菜々子の声には、怒りの色が混じり、かすかに震えていた。
かなりレアなそういう菜々子も新鮮で可愛くて、思わず笑みが漏れる。
菜々子の頭をかかえて引き寄せ、俺の肩にぶつけた。
「お前も言うようになったじゃん」
「そうじゃなきゃつき合えない。でも……まだまだヤキモチ焼くよ? きっとわたし。それでもいい?」
当たり前じゃんか。
「俺もだよ」
だから俺は今日、きっと必要以上にお前の髪に触る。
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