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ダークブルーから、物の輪郭を浮き掘りにしながら、徐々にブルーグレイに変わってゆく部屋の中、俺の腕の中でゆるい眠りに落ちていた菜々子が身じろぎをする。
菜々子、知っているか。
お前が腕の中にいると、俺は幸せすぎてうまく眠れない。
初めてお前を抱き、幸福の絶頂にいた朝に、起きたらお前が隣にいなかったことがあるからだ。
俺にはすぎた現実で、すべてが夢なんじゃないかと本気で疑ったことがあるからだ。
まだ五時くらいだろうか?
起き上がった菜々子を薄いコットンリネンのシーツ越しに後ろから抱きしめた。
「ナツ、ホントに凶暴だった……いつもより」
俺に全部の体重を預け、ゆったりした気だるい声で、まだ夢のふちを彷徨っている菜々子が呟く。
「謝んねえぞ。菜々子が悪い」
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