1004人が本棚に入れています
本棚に追加
強がってみたって結局俺はお前に勝てない。
だから謝らない、と言いながらも俺はこんなに弱い声しかだせない。
「ナツの凶暴なんて……別にぜんぜん怖くないよ」
恋愛の天秤はいつでも俺が下。惚れている俺の負け。
凶暴だったと言われ、まさかと思うけど嫌われたんじゃ……と弱気になっているのは俺のほう。
でもそんなことを簡単に認めるほど、俺も角が取れているわけじゃない。
「俺はもっともっと凶暴になれるよ菜々子。お前が今度他の男に髪なんか触らせたら」
「ナツが悪い、よ。ナツはわたしのこと俺のだ俺のだ、って言うけど、ナツだってわたしのだもん……あんなに密着して気安く触らせちゃ、やだもん」
俺の腕に両手をかけてうつむき、泣き虫菜々子がまた涙をこぼした。
こぼれた温かい涙が俺の腕にかかる。
「菜々子ごめん」
お前の涙の前では、俺のつよがりなんて空気の粒子のひと粒に等しい。
最初のコメントを投稿しよう!