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その日もほとんどがそういうものだと思っていたのに、なにやら手書きの手紙が入っていた。
やけに幼い字だった。気になって俺は他の郵便物を小わきに挟み、手書きの封筒を開けた。
なんだか凝った素材のシールまで貼ってある。
「おっ?」
封筒から二枚のピンク色の便箋を取り出し読んでいた俺は軽く声を上げた。
「なにぃ?」
俺の反応に興味を引かれたのか菜々子が横から覗き込む。
「仕事だ、仕事!」
「仕事? え? 子供の字じゃない?」
「子供だよ。ほら説明したろ? お前がいきなり合コンやってる蔵に来て、怒って出て行った後、俺が追いかけようとして女の子にぶつかって怪我させちゃったって言ったじゃん」
「うん、え? それでなんで仕事? って!ええええ? 何この手紙!」
「だから仕事の依頼だよ。中学受験の家庭教師! あの後、健司が俺も中学受験を経験してることや、今中学受験の子供を何人も見てる家庭教師だってこと言ったんだな」
「じゃなくて! この手紙の内容だよ。お兄さんが優しくてかっこいいです、とかお兄さんの中学が第一志望なんです、とか明らかに変でしょ?」
短い手紙だから菜々子は横から全部読んでしまったらしい。
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