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「なんでそんな膨れてんの? 仕事じゃん」
明らかにほっぺたが空気で膨らんでいる菜々子のそれを、ひとさし指でちょんっとつっついて破裂させる。
「だって家庭教師にかっこいいも何も関係ないし! 第一、志望校がナツと一緒って何? その子、女の子なんでしょ? ナツ、男子校じゃない!」
「まあいいじゃん、そんな細かいこと。家庭教師はマジでワリがいいの、菜々子だって知ってるだろ?」
俺は歩きながら頭の中で月曜は何時から何時まであいつでその後は……。
ダメだな、水曜ならここの時間が場所によってはイケるかも、とごちゃごちゃ皮算用を始めた。
夜闇の下、いきなり背中に、何かが体当たりする衝撃を、感じた。
「菜々子?」
「おいてきぼりにして背中なんか見せちゃイヤだ! そんなにその子がいいの? そんなにその子の家庭教師がやりたいの?」
「何言ってんだよ。金がなきゃお前に会いに行けねーだろ? 全部金のためだよ」
まあやりがいがあって家庭教師は嫌いじゃない。
「でもイヤだ……。わたしに背中向けて他の女の子のこと考えるなんて……」
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