第1章

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まず、相手が本当に自分を追っているのかを試す必要があった。本来なら遠回りになる道を通り、幾度となく曲がり角を曲がった。が、相手はついてくる。それも、自分との距離を絶妙に保ちつつだ。 十一はそのことを自覚し、改めて恐怖した。何かが迫ってくる。それも、自分を目標にして、それを考えると走って家に帰り、早く布団にくるまりたい。そんな気分になった。 だが、ここで逃げ出したら先程のもう一人の自分。そう、まるで十一を試すかのような口ぶりをした奴に負ける気がした。それだけは嫌だった。他人負ける分にはまだ「あいつの方が優れてる。だから負けた。」と、言い聞かせることができる。だが力を望む十一としては自分自身に負けるのはそれこそもう力を望むことすら許されない最底辺の人間になってしまうそんな気がしてならなかった。 そんな、ことを考えながら相手がどうでるか探っていた時、動きがあった。足音が速くなったのだ。 最初はカツン……カツン……カツン……と、歩くようなペースだったのに今ではカツンカツンカツンカツンと、早歩き所謂、競歩になっていたのだ。
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