第1章

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そんな追いかけっこを続けていると相手にまた、反応があった。先程は早歩きくらいだったのに今ではダッダッダッダッダッダッダッという走る様な足音だ。 そのことに恐怖する。だが、恐怖しているばかりでは追いつかれる。そのことに焦りながらも十一も走る。 怖い、死にたくない、まだ、生きたい そう思いながら走る。落ちている缶を蹴り飛ばし、妹とよく行った公園を通り過ぎ、曲がり角を勘任せに曲がった。それでも、足音はついてくる。走る様な速度でついてくる。 だが、十一も疲れ始める。十一は運動部に入ってる訳でもなく、帰宅部なのに運動神経がいいと言う訳でもない逆に運動神経は悪いのだ。だからこそ、疲れて速度が緩まれば足音は強くなる。だから十一は疲れた体に鞭打ち走る。恐怖から逃げる為に。 それをどれだけ繰り返したか、ついに追いつかれる!!という距離で不意に足音が消えた。そして、十一は理解した。追いつかれたのだと。だが、十一は振り向こうとした。相手は自分に興味がなくなり一瞬で何処かへ行った。という1%の可能性に賭けて。 けれど、首は動かない。わかっているのだ体が、本能が、そんな可能性はないと。振り向いたところで何も変わらない。強いて言うなら、恐怖が増すだけだと。それくらい十一もわかっている。それでも、振り向きたかった。自分はどんな強者に殺されるのか、それを知りたいというのが本音だった。 そして、今までの人生で一番強く力が欲しいと願った。振り向くだけの力が欲しいと。何の因果か神は十一を振り向かせた。 その先に居たのは、大型のサバイバルナイフを振りかぶり、獰猛な笑みを浮かべている大柄な男だった。 そして、華岸 十一は死んだ。
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