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平均的な男子高校生の身体能力しか持っていないのだ。
情けないとは思いつつも、自分の器を知っている俺はベルフレイアの華奢な背中に隠れる。
それを確認すると、ベルフレイアは目の前の石像群に突っ込んで行った。
「喰らえぇえええ~!!」
勇ましい雄叫びを上げて、振りかぶった拳を一体の石像に叩きつける。
ごおんと重々しくも、鈍い打撃音が響き渡った。
「……」
助走の余韻で浮き上がった長い銀髪が、ふわりとなびく。
それがゆっくりと、ベルフレイアの背中に着地した。
直後。
「ぎィいいやぁあああああ~~っ!!」
耳をつんざくような絶叫がほとばしる。
ベルフレイアの口から……。
「硬ぁッ! なんちゅー硬い体してんのよ?! バカじゃないのぉおお~っ!!」
真っ赤に腫れ上がった拳を抱えながら、もんどりうって倒れ込んだ。
そのまま、地面の上をのたうちまわる。
「拳がっ! 拳がぁああああ~っ!!」
「…………」
どうやら魔界の公爵令嬢はあてにならないようだ。
それとも、ホラーな天使像のスペックが高すぎたのか。
そうこうしている間にも、石像達の口腔には強烈な光が収束しつつある。
あれが一斉に吐き出されたら、どうなるか判らない。
「おい、ヤバイぞ! 何とかしろよ!」
「無理っ! 今のあたしじゃ勝てないわ!」
「じゃあどうするんだよ?!」
妙な争いに巻き込んだ挙げ句、早々に匙を投げたベルフレイアに怒りが湧く。
俺は噛み付かんばかりの勢いで詰め寄った。
するとベルフレイアは何を思ったか、ばたりと仰向けに倒れ込む。
アスファルトの地面の上に、大の字に横になった。
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