きっと第2話

14/15
前へ
/15ページ
次へ
   直ぐさまそれは、耳を弄する爆発音に上書きされて行った。  五感がバカになる。  至近距離で浴びた爆音と衝撃に、全ての感覚が麻痺してしまう。  静寂が訪れた。  そしてじわりじわりと、触覚が舞い戻って来る。  体が重い。  腹の上に、漬物石を乗せられているようだ。  そして胸から鎖骨にかけて、他人の呼気を感じる。  何だろう……?  俺の疑問に答えるように、聴覚と嗅覚が息を吹き返した。 「ハァハァハァ……!」  鉄錆びにも似た異臭が鼻をつく。  自分のものではない、浅く早い呼吸音が聞こえる。  うっすらと瞼を開くと、霞む視界に銀髪が見えた。 「ダ、ダーリンのマウントポジションを獲ったどー!」  そして俺の腹に跨がりながら、腰を振るベルフレイアが見えた。  見上げた根性だ。  額から滝のように血を流しながら、ボロボロになったカーディガンを纏いながら。  それでも彼女は爛々と輝く紫眼で俺を見下ろしている。 「――元気そうだな」 「いいえ、正直もう限界……!」  俺の皮肉に即答したベルフレイアは、その言葉通りもう限界なのだろう。  興奮のためと言うよりは、体力の消耗によって肩で荒い呼吸を繰り返している。  そこへ追い撃ちをかけるように、高らかな哄笑が響き渡った。 「まぁ、なんてしぶとい……! さすがは魔族! ゴキブリなみの生命力ですわ!」  首を捩曲げて振り返ると、石像群の向こうに仁王立つ金髪美少女が見えた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加