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俺が口を開くたびに、美少女の顔が苦悶の形に歪んで行く。
まるで言葉そのものにダメージを受けているようだ。
「羞恥心のない女とかありえない」
「ぐう……っ!」
「往来を半裸で突っ走る女なんか、特に論外だ」
「――がはっ!!」
そして最後に放った一言が、彼女にとっての致命傷となった。
「存在そのものが受け付けない」
「バカな……っ!!」
白目を剥いて床の上に崩れ落ちる。
室内に再び重い沈黙が訪れた。
そこにいかつい警察官が麦茶を啜る、ずるずるという音だけが響き渡る。
それに壁掛け時計が時を刻む、カチカチという単調な音が追い撃ちをかけた。
あぁ、今日はもう完全に遅刻だな。
というか、すでに二時間目が始まる時刻だ。
俺は足元にうずくまる美少女を、横目に見ながら嘆息を漏らす。
すると美少女は、わなわなと震えはじめた。
次の瞬間にはがばりと身を起こし、逼迫した表情で俺に縋り付いて来る。
「直すからぁっ! あたしに悪い所があるんなら、何でも言って?! ちゃんと直すぅううう!!」
「いや、無理だ。そもそも俺はお前を愛していない」
「そんな……っ! あたし達、もう終わりって事?!」
「いや、終わりも何も始まってすらいないんだが……」
何だかおかしな展開になって来た。
俺と彼女は間違いなく初対面のはずなのに、痴話喧嘩のような様相を呈している。
それが証拠にこちらに向けられる大人達の目に、非難めいた色が宿り始めた。
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