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そもそも美少女が言うように、俺の中に霸者の源泉なんてものがあるんだろうか。
そんなものが本当にあるのならば、どうやってそれを持つ者を見分けているのだろう。
冷静さを取り戻すと、次々に疑問が湧いて来る。
疑わしい以前に、胡散臭すぎて信じられない。
ただ交わるだけで覇王になれるのなら、俺が手当たり次第に異性に手を出しまくったら、世の中には覇王が溢れ返る事にならないか?
それなんて世紀末だ?
俺は吊り革を握りながら、平然と裸エプロン姿で電車に揺られる美少女を眺め遣る。
上にカーディガンを羽織っているとはいえ、裾からは裸足の足が丸見えになっていた。
少しでも身を屈めようものなら、背後にいる罪無き人々に無修正ノーカットフルカラーでいかがわしい映像をお贈りする事になるだろう。
そして今度は罪無き人々が、前屈みで退場する事になるだろう。男限定で。
俺はふっとため息を吐くと、さりげなく美少女から距離をとった。
そして背景と同化すべく、極限まで気配を消す。
必殺、他人のふり。
否、元々俺と彼女は赤の他人だ。
なんら罪悪感を抱く必要もなく、その行動を咎められる謂われもない。
しかしわずかに目を離した隙に、美少女はつつつと俺との距離を詰めて来る。
そして吊り革を握る為に折り曲げた肘に、ナチュラルに手を添えた。
「――おい」
「なぁに? ア・ナ・タ!」
俺は正面を向いたまま、地を這うような低音で傍らの美少女に呼びかける。
すると語尾に 「キャハッ!」 と思わずチョキで目を突いてやりたくなるような笑い声をつけて、彼女を俺を見上げて来た。
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