23人が本棚に入れています
本棚に追加
改札を通り抜け、駅前広場を歩き出した。
しかし案の定と言うか何と言うか。
ヒタヒタという裸足の足音が、どこまでもついて来る。
胡乱な目でふり返ると、相も変わらず輝く紫眼がそこにあった。
「お前、一体どこまでついて来るつもりだ?」
「死が二人を分かつまで!」
元気よく返される。
俺ははっと肩で嘆息して、高架下の薄暗い路地へと歩を進めて行く。
すると直後。
「魔族の薄汚いメス犬が纏わり付いているようですわね……」
玲瓏とした女の声が響き渡った。
顔を上げると半地下となっている狭い通路上に、細身の人影が立ち塞がっている。
「お前は……?!」
俺の背後で美少女が警戒態勢をとった。
その声に導かれるように、高架下からゆっくりと人影が歩み出て来る。
「魔公女のベルフレイアですか、相変わらず鼻が利くこと……」
人気のない通路にコツコツという靴音を反響させながら、一人の少女が現れた。
あぁ、確か美少女はそんな名前だったな。
そんなどうでもいい事を考えながら、俺は眼前のその人物を観察した。
金髪に碧緑の瞳。
メリハリの効いたしなやかな長身は、夏場にも関わらずトレンチコートに包まれている。
緩いウェーブを描く長い髪が、歩く度にふわりと揺れた。
しかし西洋風の色彩を持ちながら、その肌は褐色だった。
小麦色と言った方がいいだろうか。
彼女は意志の強そうな吊り目がちの目に、敵意をこめて俺を睨みつけて来る。
正確には、背後の美少女を睨みつけた。
「神族の陰険女!」
緊張を孕んだ声音で、ベルフレイアが叫ぶ。
魔族の次は神族かよ。
最初のコメントを投稿しよう!