第1章 心の兵団

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 もし、一人が世界を作った神と名乗ったとする。しかし、もう一人が私が世界を作ったのだと語れば、どうだろう。必ず、論争は始まる。そして、それは不毛の論争となる。何故なら、人の理解の及ばない世界の理屈について語り合ったら────神を殺せないのならば────それを信じる人を根絶やしにすればいいという結論か、それか最早、神を宗教の構造上における普遍的存在にすることで他宗教の自由を認める結論を下すか、どちらにしかならないのだ。  つまり、こういうことになる。  心の自由を持つ人間が心情世界の神であって、それ以外は認めない────『もの』に心を語り自由である資格は無く、命も主の所有物とする。とすると、僕がどれだけ不敬で、罰当たりで、大変くだらない下郎であるということがわかる。一般的にみればだ。  あまりこの宗教っぽい例えは避けたいものだが、無宗教なジロー対『山崎ナオト教』。これがわかりやすい構図だろう。  ────ふと、ケイジを思った。  彼はよく僕のことをなんだか面白い奴だから一緒にいるんだと言うが、彼だって列記とした『もの』だ。彼のことを深く考えた瞬間に、あらゆるものに疑問符が生じてくる。  ケイジは、真面目で優秀な兵士で、僕とつるんでいようが関係なく信頼も厚いのだが、そんな奴が僕とつるむ根本的なわけがわからない。  普通は、上記の仮説が当てはまるならあり得ない筈なのだ。彼だって、本来なら僕を憎む筈だ。なのに、考えが面白いと言って、時にからかったりするし、寄ってくる。  ……いや、何がどうおかしかろうが、僕はもうどうでもいい。  彼は、たった一人の親友なのだから────。
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