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────そこで僕の思考が、固まった。
『正の恒核』の前……『浄化淵』に入れてある、負の力に犯された『核脳』の一つの異常。半日経っても浄化が終了せず、今も強い負の力が正の力の侵入を必死に防いでいたのだ。
そして、その浄化淵のネームプレートには、僕の名前が書かれていた。その『核脳』は、僕が昨日倒した、『概念負』────核脳を取り込むことで行動目的を持ち合わせ実体化した負の力の強力な塊で、現実の人は固定概念としてこれを感じる────だった。
『正の恒核』本体の美しい、波一つないセピア色に輝く泉の側の浄化淵で、禍々しく音を立てているそれを見慣れているはずの僕は、あまりの不気味さに眉根を潜めた。半日で浄化できない負の核脳コアなんて、見たことが無い。そして、何より実感が湧かない。僕は、こんなバケモノを一人で倒せる程強くは無いはずだ。一体どういうことなのだろう。
「おいこらっ、ジロー!おまえ!屋根渡りは禁則だって言って…………っておい何だよそれ?」
先に出て行ったくせに遅れてついた可愛いケイジは、一気に戦う戦士の表情に化した。背にかかる剣の柄に手を触れながら、あり得ねえ、と一言呟いた。
「……流石にここで実体化しねえよ、負の空間じゃあるまいし。まあ、これは変だしあり得るかもだけどさ」
優秀な戦士だからこそのケイジの警戒に周囲がつられてピリピリするのを感じるので、ちょっとそれを抑えるようなことを言ってみた。
「まぁ、それはそうだけどよぉ……とんでもないぜこの負の力の汚染量は、正直めっちゃビビって反射的に構えてしまった……はぁ」
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