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僕は素早く、その鎧の頭部を切り裂き、湧き出る多少の『負の力』を無視し、手のひらに収まるサイズの『核脳』をその頭の中から抜き取った。
そして、そこからそそくさと走り去った。
「マジ……死ぬかと……ぷはっ、あはは……マジ怖いよ……やばい……あんなボスキャラ……」
九死に一生を得るとは、この事であった。僕の精神は、限界である。再びあんな敵とエンカウントしたら、確実に死ぬ。半ばパニックになりながら、全速力でこの浮遊群島から離脱せんと走った。
「最前線は辛いよ……」
────この世界に住まう物……通称『もの』とは、この僕たちのことだ。山崎ナオトの心の均衡を守る、戦士達だ。『もの』は、使命と名誉に満ち溢れている存在だ。
彼らが、死を恐る場面など、見たことが無い。神やまざきの為なら、相討ちでもなんでもする。ただ、それだけの存在。そのはずなのだ。なのに、何故僕は、僕だけは生きようとしてしまうのだろうか。異変は、殆ど五年前のことだった……何故。
問いかけても答えは無く、今生五十年目。人間の世界の年月は十五年が経過していた。
心情世界は、簡単に分ければ『正の空間』『負の空間』にわけられるが、敵側の『負の空間』の力は年を追うごとに強力になるばかりだった。
世界の広がり方も、予定より早く緩やかになった。
ただ一つわかっているのは────創造主たる人間、山崎ナオトに何らかの異変が起きている。
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